この美しき世界で

どうしていいかわからない。全てを失ってから。死のうと思った。楽になりたいとも思った。


それが叶わないことも。自分に死ぬ勇気などないことも。


じゃあどうすればいい。どうすれば解放される。忘れられる。許される。


わからない。きっと必要なのは痛みだ。強い痛み。一方的に、強制的に与えてくれるような痛み。


身体に罰を与えよう。心に罰を与えよう。


そうして俺はどうなるか。それすらわからないけれども。


それでもそうするしか方法がないから。そうしなければ俺は空っぽだから。





姿を消したセロを巨大オークは首を振り回して探す。下を見ても横を見ても姿は欠片も見えない。


「後ろだよ。」


静かな声に気付いた時にはすでに遅い。緩やかな衝撃。巨大オークは自分の腹から生えた銀の刃を仰ぎ見る。


「切れ味いいだろ。自慢の剣だぜ。」

「ブァッ!?バァァァァァァァァァ!?」


悲鳴をあげながら巨大な身を揺すり剣を腹から抜こうとあがく。その剣は意外にもあっさりと身体から抜け落ちる。


「巨体に見合った生命力か。残念だな。これで終わってれば。」

「楽に死ねたのに。」