この美しき世界で

「やっぱ硬ぇなー。ま、いいや。かかってきなよ豚野郎。」


ハルバートを片手でくるくると回しながらナツは手招きをする。


巨大オークは腹から血を流し、しかし何事もなかったかのように槍を杖がわりに立ち上がった。


手応えはしっかりしてたはず。これは意外に苦戦するかもしれない。


ちらりとハルバートの刃に目をやる。鉄製のこれでこの硬い皮膚を断ち斬ることが出来るだろうか。


元はといえば値段が安いからという理由で鉄製のなまくらを選んだ自分のせい、だが。


「関係ないねー。」


そんなことでつまづくくらいならあの『魔人』にはきっと届かない。


仲間達の無念を晴らすと決めた。復讐しようと。その為には強くならねばならない。諦めることは許されない。


刃が通らないなら、潰れるまで叩き続ければいい。武具に固執するのは二流。足りない分を己で補ってこそ一流だ。


もっと力を得なければならない。巨大オークは先程の一撃を警戒してか動かない。


「来ないならこっちから行くよーっと!」


明るい笑顔の下に復讐を秘めて。ナツはハルバートを振り上げた。