この美しき世界で

勝てるなどという確信はない。だがあのメイジという魔族。戦士タイプが戦うには些か分が悪い。


ならば自分がやるしかないだろう。人間と魔族の魔力勝負だ。負ける気はない。


それにあの二人ならあの巨大オークを任せても大丈夫だろう。自分はただ目の前の敵に集中すれば良い。


「豚の料理！頼んだわ！」


赤色の光がその身を包む。そうして彼女は魔力を膨れあがらせた。





「女はおっかないねぇ。そう思わねーかセロちゃん。」

「くだらんこと抜かしてないで構えろ。豚が鼻息荒くしてやがる。来るぞ！」


状況は良くないが決して悪くもない。一対一で戦える。それだけでも随分と違う。


二匹の巨大オークが同じタイミングで振り降ろす槍がセロとナツの間を叩き割る。


当たればただでは済まない怪力が地面を砕く。土が飛散するが逆にこれを活かして二人は巨大オークに接近した。


「俺こっちもーらい！」


ナツは身体を回転させながら遠心力で勢いを増したハルバートを一匹の腹に叩きこむ。


「ま、死なないようにしろよ。」


セロはもう一匹の腕を巻き込むように掴むと背負いながらそれを投げ飛ばす。