この美しき世界で

「っしゃぁ!!」


矢を跳ね退け猛進する巨大オークの片割れに跳びかかるのは赤い影。愛用のハルバートを頭上めがけて打ち下ろす。


「ブァッ!?」


その身体でよく反応出来るものだ。身体に見合うやはり巨大な槍でハルバートを受け止める。


「ちっ!やるねー豚ちゃん!」


ナツは空中でぐるりと反転すると距離を取りつつ着地する。


「おおっ!生きてたのか!」

「ちぃ!人間風情が私の雷雲に打たれてどうして動けるんだねぇ!」


にわかに冒険者達が活気づき、メイジは歯噛みする。確かにあの雷魔法は強大なものだ。死にはしなくとも相当なダメージは受けるだろう。


「『バサク』の鎧は特別製でねー!魔法耐性の素材を使ってんのさ!勿論直撃はキツイから豚ちゃんを盾に使わせてもらったけどね!」

「……!やってしまうんだねぇオーク!」


仮にも幾多の名戦士を産み出した町だ。魔法に劣る分、その辺りには余念が無かったのであろう。


その上に瞬時にオークを盾にする反射神経で彼はダメージをほぼ無効化していた。


しかし一時的にしのげても目の前には二匹の巨大オーク。まだ危機は脱していない。