この美しき世界で

「まずいっ…!」


猛然と走り出した二匹の巨大オーク。魔導士達はもう戦うことは難しいだろう。弓使いが弓を弾く。


「ほっ!そんなちんけな武器でどうしようっていうのかねぇ!」


矢は巨大オークには刺さらずその身体に僅かな傷を作るのみ。足止めにもならない。


「ちっ!」


それでも退くわけにはいかない。彼らにも冒険者としてのプライドがある。ここで逃げ出せばどうなるかぐらいわかっている。


治療している僧侶も生き残った戦士も魔導士だって。自分も殺されるかもしれない。


そして『リフス』は壊滅。この美しい町が地図から姿を消すということだ。それは避けたい。


「うおおおおっ!手を止めるな!射続けるんだ!」


近付くオーク。弓使い達は矢を射続ける。涙目になり、ガタガタと震えながら。それでも決して手は止めない。


戦士達を犠牲に。魔導士達は動けない。どうして自分達だけが逃げ出すことが出来ようか。


━━こうなったら私が…!


このままでは弓使い達が危ない。女魔導士が立ち上がろうとした。その時だ。