この美しき世界で

オークの群れは次々にその数を減らしていった。


「凄いわね…。あの二人。抜群の戦闘センスだわ。」


女魔導士は誰に言うわけでもなく呟いた。手の中で詠唱され練られた魔力の塊が揺らめいている。


「流石『バサク』の戦士ってわけか…。私も負けてられないわね。」


額から滑り落ちる汗。次は魔導士全員のありったけの魔力をぶつけてやる。そうすれば奴らも全滅は免れないだろう。


戦場でキラキラと揺れる二つの白銀の髪を見つめながら彼女は魔力を手の中に更に注いでいった。





その光景を遠くで見つめる影が一つ。紫色のローブに身をつつみニヤニヤと笑う一匹の魔族。


「人間などにいいようにやられるとは、情けない下僕達だねぇ。」


戦場の全てを見渡せる小高い丘の上だ。


「まぁ良いかねぇ。囮の変わりぐらいにはなったねぇ。」


その手には魔力の塊。しかも魔導士達が詠唱する物より一際巨大な。


「戦士達がいなくなれば私に敵はいないからねぇ。」

「せめて奴らごと、葬ってやろうねぇ。」


影は巨大な魔力の塊をその手から解き放った。