この美しき世界で

「ブォォォォォォ！！」

「まだよっ！抜けてくるのがいるわ！」


女魔導士から再び怒号があがる。炎の中を走り抜けてくるのは数を減らし黒く焦げた毛並を揺らすオークの群れ。


「私達は再度詠唱開始！弓使い！前衛！頼むわよ！」


後ろで魔導士が指揮を振るう間に弓使い達は既に行動を起こしていた。


伊達に冒険者として任務に参加しているわけではない。近づいてくるオークをその矢が次々と射抜き動きを止めていく。


「うしっ！行くぞ！」


オークが動きを緩めたのを確認すると前衛の戦士達は走り出した。これ以上『リフス』に近付く前に仕留めなければならない。


中で群を抜いていたのは黒の風。纏った鎧の重さを感じさせないスピードでオークの群れに接近していく。


「しぃっ！」


初太刀。オークの懐に滑り込むとミスリル製の片手剣が先頭を走る喉を横薙に断ち切る。


「ブゴォッ！」


横を走るオークが鳴き声と共に槍を頭上に降らすが既に遅い。彼はもうそこにはいない。


そのオークの横から伸ばされた腕を撫でるように斬り払った。


「ブキィィィ！」


腕を無くしたオークが悲鳴をあげ状態をのけぞらせる。