12時を過ぎた頃、携帯が鳴った。

アユミかな・・・?

携帯を見ると、タツヤからの電話だった。

「あ、俺。ねーさんその後どう?今日休みみたいだったからさ。」

「昨日は本当にありがとう。助かったよ。熱は幸い下がったんだけど、なんとなくまだだるさが抜けないから、今日はお休みしたの。」

「そっか。それならよかった。んじゃ、お大事に・・・」

「あ、待って!」

「あん?なに?」

「いや、今度きちんとお礼させてもらうから。」

自分でも驚くくらいストレートに口から出ていた。

「え?お礼?・・・高くつくけどいいの?」

タツヤはからかうように言った。

「少々は高くついてもかまわないよ。だって、本当に昨日のことは申し訳なかったからさ。」

「ふぅん、えらく素直だな。何々?まさか俺に惚れちゃったんじゃないのぉ?」

相変わらずふざけた口調のタツヤの言葉に、不覚にも怯んでる自分がいた。

「ばか言わないでよ。先輩として、後輩にはきちんとお礼がしたいだけ。ま、正直言うと借りを作りたくないってわけ。」

思わず、自分の怯んだ気持ちを払拭するべく思いもしない言葉を並べた。

携帯の向こうでタツヤのため息が聞こえた。

「ねーさん、フィアンセいるんだし、お礼なんかいいって。昨日のことなんて、どーってことないし。俺、お礼がなくても気にするようなちっちゃい人間じゃないしさ。」

こういう時、タツヤの繊細な気遣いが邪魔になる。