棚からぼた餅とは、まさにこういう状況なわけで。

私は、突如としてこんな素敵な男性から結婚前提のお付き合いをお願いされてしまった。

でも、さすがに常識人な水口さんは、私の返事は急がなかった。

しばらくお付き合いした後、私がそうするかしないかを決めてもらえばいいって。

そういう謙虚な姿勢が、さらに私の気持ちを揺さぶった。


まだ二回しか会ってないのに。

水口さんが私と結婚前提に付き合いたいっていうのが信じられなかった。


「どうして、私なんでしょうか?」

こういうこと、ひょっとしたら複数の女性に持ちかけてるって可能性はゼロじゃないものね。

これだけ素敵な人だし。

海外赴任が決まったことで、いろんな女性を吟味してるってこともあり得る。


って、私ってどれだけ慎重派?!


「どうしてって・・・。それを聞かれると難しいな。」

やっぱり?

「最初に出会った時の感覚、かな。ハルナさんとはものすごい縁を感じてしまったんです。運命的な。」

「運命的?わたし、あんまりそういう運命とか信じないタイプなんですけど。」

「すみません。そうですよね、そういうのって答えになりませんよね。」

水口さんは困った顔で頭をかいた。

「こないだの合コンで、初めてお会いしてお話して・・・僕、今まで合コンって苦手だったんですよね。初対面の人に話すのも億劫だし、そういうのに来る女性も、どうかなぁって思ったり。いや、ハルナさんのことではなく一般的に。だけど、こないだは人生初めて楽しいと思えたんです。他の女性のことは申し訳ながらほとんど記憶がないですが、ハルナさんとお話してすごく楽しくて、もっと話していたいって思って。」

水口さんは、運命という漠然とした説得力のない言葉を、どうやって私に理解してもらおうかと必死に伝えようとしていた。

そりゃ、そうよね。

運命なんて、なんでも運命で片付けられたらそんな簡単なことはないもの。

これだけインテリな水口さんの口から運命っていう言葉が飛び出したのも意外だった。

でも、その姿から「運命」という言葉が、口から出任せではないと感じられた。