結婚事情

「あ、ごめん。時間だわ。今度ゆっくり聞かせて。今日はとにかくがんばって!」

私は自分のテンションが落ちるのを振り切って、前向きな言葉を並べた。

そして、アユミに大げさに手を振ると、そのまま更衣室を飛び出した。



バタン。

更衣室の扉を閉めると、少しひんやりとした空気がほほをなでた。


そうなんだ。

アユミは、タツヤのこと。

タツヤは今日は誰誘ってもよかったんじゃん。

ほんの少しだけど、心配しただけ私が損だったわ。

短くため息をつくと、そのままエレベーターホールへと急いだ。


そう。

気持ち切り替えなくちゃ。

これから私は水口さんとデートなんだから。


ビルの外は、せわしく行き交う人たちであふれていた。

それぞれが、それぞれの場所に向かってる。

いろんな思いを胸に秘めて。