私たちはお店を後にした。

終電間近に迫っているとはいえ、大通りは多くのサラリーマンでごったがえしていた。

やっぱり花金と言われるだけある。

明日は土曜日。

遅く帰っても、朝に帰っても、誰にも迷惑かけない日。

いつもより、気持ちに余裕ができる。

「少し歩く?」

タツヤは大通りを逸れて、人気がまばらな路地を通って行った。

少し歩くと、公園がある。

何組かのカップルが肩寄せ合ってベンチに座っていた。

カップルとすれ違った後、タツヤがぼんやりとつぶやいた。

「なんだか俺の左手寂しがってるんだけど。」

タツヤの左手をみると、わざとらしくグーパーグーパーを繰り返していた。

「何?それ。」

わかっていたけど、わざわざ聞いてみる。

「手つなぐくらいはいいんじゃない?そーそー、例の心理学の教授が手をつなぐだけでも結構相性わかるって言ってたし。」

タツヤもさすがに言いながら恥ずかしくなったのか、うつむいて頭をかいた。

私は何も言わず、タツヤの左手を握った。