ナオは前髪を掻き上げた。

「いや、ごめん。別に無理強いじゃないから。」

私のそんな様子に、ナオは気づいたようだった。

寂しげな顔で笑うナオに、気持ちがキュンとなる。

ナオは、本当に女心を自然にくすぐる人だ。

「別に無理してないよ。ナオの部屋って、どんなだかちょっと気になったりもするし。」

私は自然な雰囲気で笑った。

「一応、今日は掃除もしてきたし、最低な状態ではないはずだから。」

ナオは照れながら笑った。

急に少年のような表情になるから、普段とのギャップに戸惑いながらドキドキする。

喫茶店を出ると、パーキングに停めてあるナオの車の助手席に座った。

ナオの家は、車で30分ほどのところにあると言う。

車内にはゆるやかなジャズが流れていて、心地よい気分に浸っていた。

ナオの運転はとても安定していた。

何をさせても、無駄のない人。

今のところ、少し嫉妬深いところを除けば、何も問題はなかった。

緑の並木道が美しい住宅街を抜けたところに、ナオの住むマンションがあった。

結構なたたずまいのマンションに一瞬言葉をなくす。

確かに、ナオは大手商社に勤めてるけど、こんないいマンションに住んでるの?

しかも一人で??