ホームに電車が入ってきた。

「あ、ごめん。電車来たわ。じゃ、金曜に。待ち合わせ場所は・・・?」

「会社の玄関でいいんじゃない?俺、その日は残業しないし。」

「そんな目立つとこで構わないの?」

ちょっと驚きだった。

「別に。やましい関係じゃないでしょ?俺たち。」

俺たち・・・か。

「ま。この先はやましくなるかも、だけどねぇ。」

いつものふざけた口調でタツヤは笑った。

「んじゃ、金曜よろしく!」

「うん。またなんかあったら連絡して。」

「おう。」

電車の扉が開いて、携帯を切った。


不思議ととても落ち着いた気分だった。

なんていうか、自分の気持ちが少しずつ、『結婚』を意識した何かをつかむ一歩を踏み出したっていうか。

正直、アユミとナオに対して、後ろめたい気持ちがないかと言えばないわけではなかったけれど。

ミユのアドバイスを信じよう。

今はそれしかできないから。

何よりも私の気持ちが、本当に何を選ぶのか。

それを確かめるために。


車掌さんの警笛に気づき、慌てて電車に飛び乗った。