「・・・こういうのを『誘拐』って言うんじゃないんですか?」 きらびやかに光る街の夜景を見ながら、私はぽつりと呟いた。彼に聞こえるか聞こえないかの声で。 「誘拐じゃないだろ。無理やりじゃないし」 キィ、と車は赤信号で止まった。 うそだ。ほとんど強制じゃない・・・。あの顔をされたら、断れないの分かってるくせに。 ぼんやりと景色を眺めていると、突然彼の指が私の手に触れた。 「……妃奈……」