ただ あなただけ・・・


「主任、コーヒー入りましたよ?」


私は彼の横にコトリ、とカップを置いた。


「ん〜…ありがとう」


いつの間にか彼は自分のノートパソコンを持ち込み、カタカタと物凄いスピードでデータを入力していた。


手元には私のやりかけの資料があった。

「え・・・・?何しているんですか?」


まさかと思って彼の画面を覗き込んだ。すると、この短時間に半分終わりかけていた。


「・・・二人でやれば早いだろ?俺もそこまで鬼じゃない」


「・・・・嫌がらせかと思いました。普段は数人でやるのに」


「はははっ、嫌がらせな訳ないだろ?俺は妃奈を見込んで頼んだんだ」


彼はカップに手を伸ばし、コクリと一口飲んだ。