ただ あなただけ・・・


「…ありがとうございます」


私はポツリと呟いて受け取った。彼はふわりと笑い、どういたしまして、と言った。


「あ・・・コーヒー煎れますね」


私は平然を装って席を立った。本当は心臓が高鳴っていた。


・・・彼を嫌いになれればいいのに・・・こんな気持ちにならなくていいのに・・・


そんな事を思いながら給湯室に駆け込むと、急いでお湯を沸かし始めた。カップを用意し、インスタントコーヒーを三杯入れた。砂糖は二杯。意外に甘党なのだ。


お湯が沸いたのでカップに注ぎ、軽く混ぜ最後にクリームを入れる。

自分の分も手早く作り、デスクに急いだ。