しかし、ほっとしたのも束の間。今度は私の耳元に顔を近づけた。 「・・・ふ・・・そんな顔するな。これから『俺』を知るんだろ?」 そう言うと、頬にゆっくりと隼人の唇が落ちた。 「教えてやる。その前に・・・お前の中からあいつを忘れさせる。比べられるのは嫌だからな」 くしゃりと妃奈の頭を撫でると、そのまま手を引いて歩き出した。 妃奈は無言で隼人の手をぎゅっと握り返した。