だんだん男に近づき、私は電話に出た。
「・・・もしもし・・・若葉です・・・」
『・・・遅い・・・』
―――彼だ・・・――
私は電話を握り締めたまま走った。隣にいたみちるが驚いている。
ハァハァ・・・
「――五十嵐さん・・・なんで・・・ここに・・・?」
「仕事で近くに寄った。妃奈の顔が見たかったからな・・・」
頭を優しく撫でる五十嵐だが、眉をひそめている。
「・・・どうしました・・・?」
手を止めて、私の髪を掬う。
「いつになったら五十嵐じゃなくなる?」
「え・・・?あ・・ごめんなさい・・・隼人さん」
彼は満足そうに微笑んだ。
「・・・妃奈。明日は出掛けられるか?」
「明日・・・ですか?用は無いですよ?」
五十嵐は立ち上がり、私にメモをくれた。
