「そして・・・君が34歳の秋・・
蓋神が死んだ。」

荏原は息をのんだ。

「・・・47歳だったね。
蓋神が君に残した言葉。
言葉数の少ない蓋神が最後に力を振り絞ってかけた言葉・・・

<好きなら強くなる>

そう言って蓋神は君に微笑んだ。
君も思っていただろう?
<将棋を通して人生を教えてもらっていた気がします、と。>
だが、言えなかった。

蓋神は心不全だった。酒、たばこが負担をかけていたんだろうね。
蓋神はみんなに好かれていた。
みんなが泣いた。・・・君は?なぜ泣かなかった?」

東の空が明るくなってきた。