「それから、4年の間・・・、君は将棋をやめた。
県代表で、戦った全国大会で負けたからだ。君は壁にぶつかった。上には上がいる、結局、いつまでもトップになれない。それを悟り、自分を諦めたんだ。
そしてそれには、もう一つ原因があった。
後輩に<粉川・こがわ>という将棋のプロを目指していた男が入ってきたんだよね。君は休憩時間に彼と対戦するが、20連敗を喫する。将棋が初めて怖いと思ったんだよな。・・で、本格的に将棋をやめる決意をする。
粉川は止めたよね。<僕はプロを目指していたからアマチュアの大会には出れない。荏原さん辞めないで下さい>とね。君は止められれば止められるほど、辞めたくなるタイプだ。そしてやれと言われてもやらない。・・自分勝手な奴だ。」

カインは続けた。

「まあ、それが人間らしいとも言うがね」

カインは笑った。

「しかし、君は怖さのあまり、そのいい環境を放棄してしまったんだ。そこから始まるのに。・・・まったく、人間てやつは」