「カナちゃんどうかしたの?☆」


すぐ耳元で由依の声がする。

誰かが息を呑む声が聞こえた気がした。


『ううん、何でもないよ』


自分に言い聞かせるように言う。


何でもない、何でもないはず。

遥の方を見ていたのは偶然。

深い意味なんてない、と……。


「そっか、心配して損したっ!!

じゃあ、意地悪ハルちゃんはほっといて一緒に練習しよっか☆」


底抜けに明るい由依の声で一気に場の空気が変わった。


『もう由依ったら、損したはないでしょっ!!』


「エヘヘッ☆」


私に軽く小突かれて、由依は笑いながらペロリと舌を出す。


「はいはい、皆休み過ぎ。

練習再開っ!!

サビの頭からっ」


手を叩きながら仕切る紫水。


それを聞いた清龍は黙って配置につく。


「ちょ、待てよっ!!

おい、由依!!

なんで俺様だけ仲間はずれなんだっ!?」


「ふんっ、そんなのカナちゃんをいじめるからでしょっ☆」



本番まであとわずか。

こんなんで大丈夫なのかっ!?