「はいっ」

必要以上に大きな声で返事する私に木下さんはクスクス笑う。

「帰るか」

「はい」




結局木下さんに送ってもらう事になって、何度目かになる助手席に私は座っていた。

時折、木下さんの横顔を盗み見る。

何だろう、この気持ち。
嬉しいような、恥ずかしいような、苦しいようで弾む感じもする。

複雑な心境に心臓がドキドキして呼吸が苦しい。

私は木下さんに気づかれないようにそっとため息をついた。






「ありがとうございました」

「じゃあな」

微笑む木下さんとまだ離れたくなくて、つい口から言葉が零れた。

「あ、あの…よかったら上がっていきませんか…?」

驚く木下さんに恥ずかしくなって俯いてしまった。

いきなり深夜にこんな事言うなんて、何てヤツだと思われたかも…。


「もう遅いから…またな」

何の考えもなしに発した自分がただひたすら恥ずかしい。

「はい…」

もうここから逃げ出したい!


「高野」

ドアに手をかけて下りようとした私を木下さんが呼び止める。

その声に動きを止めた私の腕がグイッと引っ張られた。