『好き』を教えて

「よく本屋に来て高野に話しかけてるだろ」

あの男が時々来店しては高野に話しかけて帰って行くのを俺は何度か目撃してる。

「あ…はい…」

「何だか意外だな」

「最近…付き合い始めたんです…」

「ふーん」

ま、俺には高野が誰と付き合おうと関係ないけど。

「あの…私語はだめでしたか…？」

「いや。仕事に差し支えなきゃ構わない」

明らかにホッとした様子の高野がなぜか気に食わない。

自分から話を振ったくせに俺ってバカじゃね？

それ以上その話題に触れず仕事の説明に戻った。





高野の鈍臭さは相変わらずだが、店の仕事を覚えて、ようやく使えるようになってきた。

高野も店に慣れて、以前ほど緊張もせず、バイト仲間と親しく話す光景も見られる。

そんなある日。


「木下さん、ちょっと」

バックで事務仕事をしていた俺をバイトの女の子が呼びにきた。

「どーした？」

振り返る俺に困った顔で口を開く。

「例の…アダルトの人が来てるんです」