俺の腕の中で泣く高野をただ抱いて時間が過ぎていった。

泣くほどカレシが好きなのか、俺と会う前にカレシと何かあったのか。

それは俺にはわからないけど、肩を震わせて泣く高野を守ってやりたい気持ちになる。

高野にはカレシがいる…。
俺の出番はない。
それがわかってるのに。




「すいません…」

まだ涙声の高野は俺の胸に手を当て俯く。

「いや…」

手で涙を拭って無理矢理笑おうとする高野が痛々しかった。

「帰るか」

「はい…」

高野の家に向けて俺は車を出した。








「ありがとうございます」

もう空が白んできて、澄んだ冷たい空気の中で高野は頭を下げた。

「遅番でよかったよ」

冗談めかして言う俺に高野は笑顔を向ける。

僅かに上を仰ぎ、自分の部屋を見る高野の顔が一瞬不安そうに曇った。

「高野?」

「あ……。付き合わせてしまってごめんなさい」

「ホント謝ってばかりだな。店以外でそんなに謝るな」

「すい……」

また謝ろうとして慌てて口をつぐむ。

何だろう?
高野の様子がおかしい…?

俺は車から降りて高野に告げた。