走り去る車を見送っていた私は遠藤さんに腕を掴まれて我に返った。

「真由子」

「ここじゃ…迷惑になるからうちに入ろう?」

遠藤さんを促して私は自分の部屋へと歩きだした。






無言で座っている遠藤さんにコーヒーを出す。

「こんな時間に出かけて…ごめんね」

「何度電話しても繋がらねーし、心配で来てみたら…真由子が男といて…」

少し落ち着いた様子の遠藤さんに内心ホッとした。

さっきの勢いだと話を聞いてもらえなくて、誤解されたままになるかもって思ったから。

「バイト先に携帯忘れたの思い出して…取りに行ってたの」

「そうか」

「さっきの人は木下さんっていって、バイト先の社員さんなの。私が一人で帰るのが危ないって送ってくれただけなの」

「それだけか?」

「え?」

「真由子って男を信用し過ぎてない?」

「どーゆー事?」

私だってそんな世間知らずじゃない。
見知らぬ男の人の車に乗ったりなんかしない。
木下さんだったから甘えて送ってもらっただけなのに。