「おい!高野!それこっち!」

「は、はいッ!」

慌てて振り返った高野は足元の本の束に躓いて身体のバランスを崩し、縋りついた本棚にキレイに並んでいた雑誌をバサバサと落とした。

はぁ―――…。
こいつはどーしてこう鈍臭いんだ。

「すいませんッ!」

急いで拾い集め元に戻す高野に気づかれないようにため息をつく。

「俺、先にこれ持ってくから後から来いよ」

「はい」

申し訳なさそうな顔で俺を見上げた。



この鈍臭い女は数日前からバイトとして、この本屋兼レンタルショップ店に入ったばかり。

店長に仕事を教えるように頼まれた俺は、数日でこいつの鈍臭さに呆れていた。

仕事に慣れてないのは仕方がない。
だが店長はどーしてこんな鈍臭いヤツを採用したんだか。



「遅くなりました」

少し乱れた呼吸で急いで俺の元に来たのがわかる。

「このコミックに全部ビニールかけて。機械が熱くなるから気をつけろよ」

「はい」

荷物の包装を解き、机にコミックを積み上げて真剣な顔で機械に向き合う高野がちょっと可笑しかった。