LAST LOVE -最愛の人-

「マジで意味わかんない!」


バイト先では定期的に飲み会が行われる。
交流を深めるため、という名目だが、常に参加する面子は既に交流が深い、と誰もが感じている。

こういう場に参加しない人とこそ交流が必要なのだが。



「店長!この男素直過ぎてむかつくんですけど!」

芽依は翔の首を絞めた。
既に芽依をはじめ、場の全体が酒に出来上がっている。

「まぁまぁ結城ちゃん。莢木ちゃん、何したわけ?無理矢理はいかんぞ無理矢理は。」

宥めるようにジムの店長が翔を救い出す。
バイトの大学生が多いため、店長は数少ない大人の男だった。


「俺、結城サンの寝込みは襲ってないデス」


むしろ襲われるほうだし、と翔は涙目で冗談混じり、ぼそりと呟く。


「そうじゃなくて…。会えないからって別れるのってどうなのって話!」


「ん?結城ちゃんの彼氏って莢木ちゃんだったっけ?」


「実はそうなんで……」
「ちがーう!!!」


バシ!
と、ついに芽依の手が翔の頭に伸びる。


「結城サンひどい…」


「芽依ちゃん、暴力はだめだよ~」


別の輪で盛り上がっていた理子がにこにこと牽制の言葉を挟む。
酔うと笑い上戸になるようで、いつも以上にけらけらと笑いをあげている。


「まぁまぁ。でもね、莢木ちゃんは彼女を中途半端に繋ぎ止めておくより、潔くていいんじゃないかな」


「デショ店長!流石話分かる~!」


「私、そこが分かんないんですけど…」


芽依がうなだれてカクテルのグラスに手をかける。
暑い店内に、氷は溶けかけ、水滴がグラスを濡らしていた。


「会えなくても我慢して、相手を信じて、待つのが恋愛ってもんじゃないの?」


まぁそうなんだけど、と店長が腕を組んで考え込むフリをした。

「結城ちゃんの意見は理想だねぇ」


曖昧に濁そうとする店長に対して、翔はいつも明朗だ。




「そう、理想。でも、それが出来るのは本当に好きな相手とだけです。俺はそこまで相手のこと好きじゃなかったから」