「俺のこと、知らないの?」
少し沈黙の後、彼は悲しそうに微笑んだ。
「一応、同じクラスなのにな…」
「……………へ!?」
最後の一言にとても驚いた。
同じクラスなのに顔も名前も覚えてないとか、私かなり失礼じゃない?
「ごっ…ゴメンなさい!」
「いいよ。俺、今日転校してきたばっかだし」
そういえば今朝先生が誰か紹介してたような…
でも私、悠のことで頭がいっぱいだったんだよね…。
んー…、転校生…転校生。
ぼんやり聞いていた話の中から、彼の名前を見つけようとする。
えっと…、確か…。
「中山くん!」
「いや、中野だから」
「……………すいません…」
「……お前謝ってばっかだな」
そう言って、中野くんは笑った。
つられて私も笑う。
「お前が笑うなよ!」
「だって中野くんがっ…アハハッ!」
久しぶりにこんなに笑った。
久しぶりに…、
悠のことを考えずにいられた。
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