電話だ、そう駿に言って席から少し離れた。
そして相手の名前を見た瞬間…、
心臓がドキンと跳ねた。
「…もしもし」
『俺だけど』
「知ってるよ。…電話してくるなんて珍しいね、“悠”」
…本当にびっくりした。
悠が私に電話してくるなんて、初めてのことだったから。
『お前、今どこ居んの?』
「ファミレスだよ」
『…誰と?』
「…駿とだよ」
別にやましいことなんてない。
だからハッキリ答える。
『…………今すぐ帰ってこい』
「え?…ちょ…待っ…!」
ツー ツー… 、
抵抗虚しくも電話を切られた音だけが耳に響いた。
席に戻ると、駿がメロンソーダを飲んでいる。
「もう電話、終わったのか?」
「…………………うん」
「…どうかした?」
心配そうに駿が尋ねてきた。
「悠が今すぐ帰って来いって」
「悠?」
うん、と頷くと“何で悠が?”と言いたげに首を傾げる。
「私と悠付き合ってるんだ」
そう言うと駿は顔をしかめた。
「でもアイツ…」
…きっと、女遊びのことを言いたいんだと思う。
「知ってるよ。ぜーんぶ知ってる」
「だからあの時………そうか」
駿はなにやら1人で納得してしまい、
「早く行って来いよ。んで、悠が帰ったら俺に連絡すること!」
そう言って、ニカッと笑った。
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