座り込む神楽の手元には父が大事にしていた羅国のお守り、浅葱色の勾玉が灰を被って転がっていた。 でもそれは神楽の知っている綺麗な浅葱色ではなく、血で曇った藍色に変化した勾玉だった……。


それから数日。あの日の情報を獲ようと
繁華街を彷徨いたり路地裏を彷徨いたりしたが何も収穫はなかった。強いて言うならば短剣を一刀手に入れたくらいだった。あとはただなんとなく、東雲の人間なのがバレたらいけない様な気がした。


「なぁ。お前………名前は?」
「ゼファ。ゼファ……アリシューザ……」
「歳は?」
「8歳……」
「そうか……。親は?」
「いないよ……。じゃなきゃこんな路地裏で生活してないよ……」
「俺と同じだな……」
「そんなの珍しくないよ。そんな奴……たくさんいる。黒い服着た奴が殺しに来るんだ」
「……………お前。父ちゃんと母ちゃんに会いたくないか?」
「え?……会いたいけどもう会えるわけないじゃないか」
「俺が会わせてやるよ……」
「無理に決まってるだろ!」
「いいから俺について来いよ!」


誰もいない繁華街の裏の世界。そこで神楽の中に流れる武将の血が騒いだのか?


「どこ行くんだよ!?こんなとこ来たってお父さんもお母さんもいるわけないよ!」
「ちょっと前に出てきてみろよ?」
「??これでいい…………?」


ドンッッ………… 。


「約束だ……。よかったな。お前……これで父ちゃんと母ちゃんに会えるぞ………。あとは俺に任せろ。お前の親の仇も俺が取ってやるよ……」


━━俺がお前になって生きてやるから………━━━


神楽が初めて殺したのは自分と同じ位の背丈。 同じ年齢。家族もいない。こんなドス黒い世界で生きているのに、あまりにも素直で純粋過ぎる。そんな銀髪の少年だった。


東雲神楽という名を捨て、ゼファ=アリシューザとして生きる為、あの少年と同じ様に
黒い髪も銀髪にした。 ただ、あの少年になるにはもう手は汚れ過ぎたかもしれない。



「これで東雲一族は全滅だ……」


そう………。東雲神楽とは他の誰でもない。俺のことだ………。