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傀楼殿には東雲の血を引く人間が全て集まっていた。この時代、傀楼殿を束ねていたのが東雲劒煌。まだ歳は若かったが
ヴァリーフォージ上層部の実力者だった。劒煌には同じ上層部に所属する妻の歌仙、 娘の琴音、神楽、漣という2人の息子がいた。


彼らを始め、この一族は何不自由なく幸せに暮らしていた。……あの日までは。


「神楽。そろそろ家庭教師の時間だ。準備しなさい」
「……ふん。なんだよ、いつも俺ばっかり……。父ちゃんも母ちゃんもねぇちゃんと漣には勉強しろとか言わないくせに…」
「つべこべ言いなさんな。あんたはいずれ父ちゃんみたいに傀楼殿を背負うんだよ」
「でもおばちゃん。父ちゃんはほとんど家に帰って来ないじゃないか」
「それは大人の事情ってもんさ」
「大人は勝手だな」
「子供が何生意気言ってんだ!早く準備しなさい!」
「いってぇ!おばちゃんが殴ったー!」
「あんたがうるさいからだよ!」


子供達の両親は仕事だかなんだかは知らないが、 ほとんど傀楼殿には戻らなかった。そんな両親に対し 8歳の長男、神楽は少しなからず不満を抱いていた。


「なんだよ……。みんなして俺をいじめてんのか?」


家庭教師が来る。そう言われて準備するのに神楽は自分の部屋へ向かっていた。


「神楽ッッ!」
「…………?母ちゃん!今日は帰って来たんだな!?」
「神楽……お母さんについてきなさい!」
「???でもおばちゃんがこれから家庭教師が来るって言ってたぞ!準備しなきゃまた怒られる」
「いいから!こっち来なさい!」


数日ぶりに見た母は何かに怯え、焦っていた。神楽の手を引き、地下へ続く廊下を走った。


「母ちゃん!どこ行くの!?もう疲れたよ!」
「黙ってついてきて………」
「………………」


わけもわからずつれてこられた場所は今まで来た事のない地下へ繋がる床下の隠し扉の前だった。


「なんだここ………?」
「神楽………」