新入りが入ってきた。いつだかアレクトに連れられて見物しに行った娘だった。廊下でぶつかったばかりだった。何故武器開発をしてた様な奴が工作員に志願してきたのだろうか?だが、きちんと審査を通してここへ来てるんだ。それなりの奴なんだろう。そして一番気になったのは彼女の背負って来たでかい闇だった。入ってくる前に ある程度ボスから情報は伝えられていたが………。


月影島出身。父はかつてヴァリーフォージに所属していた オリオール=イージス。 母の存在は不明。たしかこいつは2年くらい前に失敗したとか聞いた任務でのターゲットだ。そいつの娘?何故そんな奴がここへ来る?一体何が目的だ? 異端者の娘だぞ?……父を抹消された事への復讐が目的か?


これからお前も堕ちていくのか………?その瞳の奥には一体何が映ってる?見た感じお前の闇は俺の闇より遥かにデカそうだ。工作員に何された?復讐するのか?やめとけよ。やるだけ無駄だ………。……俺がそうだった様に。


気付くと魅了されていた。彼女の容姿にか?いや違う。闇に堕ちて行くその姿、そして復讐に燃えた瞳、それが美しい少女を更に引き立てていた。


しっかり捕まえていないと今にも消えてしまいそうな程孤独で悲しくて儚い存在は俺の本能を激しく掻き立てた。


それがいつしか確かな愛情へと変化していくのにはあまり時間は要しなかった。


これからも自分の仕事は続けていこう。奴等への思いも変わらない。けどもう死ねない。あいつを残して逝きたくない。これが未練ってやつなのか?


俺は闇へ堕ちる事はやめた。その代わり
お前が許してくれるのならお前の闇を半分背負おう。 それだけで生きる理由になるから………。