「あんたらしくない。あんなので取り乱すなんて…」
「…あぁ…………悪かったな」
「別に……。死ななかっただけマシでしょ?」
「死ななかっただけマシ……か」

珍しくイセルナと共に任務に出た日にそれは起こった。イセルナの放った炎が異端者を焼き消して出した焦げ臭さに反応して俺は暴走した。抹消対象は一応きちんと抑えはしたが、暴走して当然の如く自分も多いに負傷した。



「禁断症状じゃないの?……こんなんじゃ復讐目的でここに居るのがバレちゃうじゃない」
「復讐……。そこまでバレてたか」
「組織内じゃそんな奴ばっかだ。あたしだってそう。目の前にいるのはすべて敵。そのつもりでここにいる……」
「なら俺も敵か?」
「さぁ?わからない?」
「お前……。やっぱ嫌な奴だな」
「殺し屋にいい奴も悪い奴もある?」
「それもそうだな。……なぁ、イセルナ…………」
「何?」
「昔話してやろうか」
「昔話?」
「あぁ。昔この街で起こった悲劇。闇に葬られたあの事件…………」




━━━東雲一族。かつてこのアルトルーシュカに存在した唯一の羅国の血統。 まだ月影島が羅国と呼ばれていた時代、この大陸に渡って来た一族。彼等は繁華街の奥地、『傀楼殿』という館に身を置いていた。日の光も届かぬこの場所で百花繚乱の如く散り乱れる花吹雪。異国情緒溢れるこの場所を人々は花屋敷と呼んでいた。━━