咲良は流れ星に感動して、はしゃいでいた。
綺麗、綺麗……綺麗!
白く、淡く光る流れ星がたくさん友達を引き連れて降ってくる。
私に届かない、雨のように、たくさん、たくさん降ってくる。
あ、そうだ。願い事しなきゃ。
えっと、うーん……学校に、いきたいな。
足が速くなって、勉強ができて、友達がたくさんできて……大人になりたい、な。
咲良は、身体が悪くて、足が弱い。
だから車椅子に幼いころからずっと座っていたし、病院で入退院を繰り返している。
だから、家族は皆咲良に弱い。
大人になれるかどうかもわからない身体。
明日には動かなくなっているかもいれない身体だから、皆精一杯咲良に優しくして、甘やかしていた。
咲良は、聞かされていなくても敏感にそれを感じ取っていた。
私が見たいって言ったから、お父さんは会社を休んでくれた。お母さんはこの公園をわざわざ探してくれた。お兄ちゃんはお父さんじゃなくて、私と一緒に遊んでくれたんだ。
だから、私はありがとうとかも言わない。願い事だって口にだして言えない。だって、皆必死で私に隠そうとするから。私は、気づいちゃいけないから。
そのとき、咲良は歌を聴いた気がした。
そして、気づく。
いない。だれか、大切な人が。
「……お兄ちゃん?」