「ーっ!!」
声がっ……出ない!
空気が詰まってるみたいに息ができない!
長く感じた浮遊感は、全身に走る衝撃と痛みで無くなる。
なんとか、首は死守したか……。
見上げると崖はたいした高さではなかったようだ。
せいぜい、学校の2階から落ちた程度だろう。
だけど、骨折しない高さじゃない。
内臓がかき混ぜられたみたいに気持ち悪いし、腕や足は痛みに悲鳴をあげている。
「うぅ……」
まずい、立てない。
こんな人気のない場所、誰かが見つけてくれるとも思えない。
ここで、死ぬのか?
父さん、母さん、咲良……お願いだから、誰か僕を、見つけて。
その時、ふわりと影がうかんだ。
暗くてよく見えなかったが、そこには、暗い色の外套を羽織る、少女が。
「人の子、あなたの名前は?」
声が聴こえた。
儚くて、透き通っている、幻のように消えてしまいそうな、声が。
「か、えで……」
僕は目の前がだんだん暗くなっていくのを感じた。
近くで歌が聞こえる。これは、詠い人の、歌?