「こーかちゃん」

「なんですか?咲良ちゃん」

「私、お兄ちゃんのこと、なにもわかってなかった」

「はい、それで?」

光華はつめたくも聴こえる声音で返事をした。
咲良はそれでも構わず続けた。

「私、身体が弱くて、足が使えなくて、だから、普通だったお兄ちゃんが、好きだったけど、羨ましかったし、なんていうのかな……嫌いだった」

「妬ましかった、ですか?」

「うん、たぶんそれ。でも、お兄ちゃんも、私に教えてくれなかっただけで、苦しかったんだね」

「そうかもしれませんね」

「私も、もうすぐ死んじゃうから、きっとお兄ちゃんはもっと苦しくなるんだ」

咲良は、ぽろぽろと、涙を零して、うつむいた。

「死にたく、ないなあ……」

光華は何も言わず、咲良を抱き寄せて、優しく頭を撫でた。