「でも、幻歌は、光華さんをフウって呼んでいたよな?」

「ええ、名前を呼ぶことができるのは、生きている人だけですから」

「なんで、こーかちゃんはフウなの?」

「詠い人の詩です」

「詠い人のウタ?」

「そう。詠い人を識別する詩ですね」

「ああ、そういえば、幻歌も言ってたな」

「そうだね。憶えてる?」

「……ええと」

「もうー。しょうがないんだから。『幻の歌は祝福としがらみをこの身に』だよ」

「私は『一迅の風は光の華を揺らす』です」

「詩に意味はあるの?」

「ありますよ。詠い人の特性を表し、ひいては、カンタンテの能力にも影響します」

「特性?」
「能力?」

僕と咲良は今度は違うフレーズで重なった。

「ええ、と。とりあえず特性から。簡単に言えば、属性です。火とか水とか。でも、詠い人は絶対に他と重ならない個々の特性を持ってます」

「たとえば、私は記憶だね」

「そして、私が風です」

「つまり、私のカンタンテの能力は、記憶を司ることだね。たぶん……他人の記憶をすくって具現化する力かな」

「私は、風と一体化して自由に操ることですね。遠くを見たり、飛ばしたり、攻撃したり、防御もすれば風の声を聞くこともできます」

「万能だな」

「私だっていろいろできるよ!」

幻歌が体重をかける。といっても、ほとんどないようなものなので、乗っかられた、と感じただけだったけど。