「追いかけましょうか」
光華はふわりと咲良の目の前に浮かぶと、その右手を差し出した。
「切るか、結ぶか。どちらでも好きなほうを選んでください」
切るか、結ぶか。手を払うか、手をとるか。極端に言ってしまえば、受けるか断るか。
だけど、咲良は思った。
縁を、切るか――結ぶか。
つまり、ここで決めろと言っているのだ。光華は。
ここまでなら、星降る夜に見た夢になる。――引き返せる。
ここからは、咲良が生きてきた世界の常識がくつがえされるような、大事な足場を崩すことになるかもしれない。つまり――戻れなくなる。
必ずしも、そうとは限らないとは思うけど……。
咲良は光華の差し出された右手をじぃっと見つめた。
さて、吉とでるか、凶とでるか。
「こーかちゃん」
「なに?咲良ちゃん」
「全部、教えてくれる?」
「約束しましょう」
「胡散臭いな」
咲良は苦笑して、その手をとる。
光華はそれを強く握り、飛んだ。
「そりゃ、『光華』ですから」
どういう意味だろう。
だけど、いつかそれも教えてくれるだろう。
咲良は光華に身をゆだねて、暗い森の隙間を探した。