私は彼の言葉に少し驚いて、それから考え込んだ。


カナダに来て四年、この部屋に住んで三年。
同居人のタオについて私が知っていることは、ほんのわずかだった。


チャイニーズとカナディアンのハーフ。

甘い物が好き。


ゲイ。


彼とは今まで程良い距離を保って暮らしてきたけれど、今夜は彼の好意に甘えてみようか。


他人に甘えることを頑なに拒んできた私だが、今夜は珍しくそんな風に思えた。


さっき見た窓の外の月が、ほんの少し欠けていて不完全だったからだろうか。


私はしばしエアメールを見つめてから、先ほどの夢の中の血の臭いを追い払うように、大きな声で言った。



「シャワーを浴びてくるから、少し待っててくれない?自分の汗と涙で、風邪をひきそうなの。」



ドアの向こうで、タオが小さく笑った。