え………?
"いいにおい"………?
「付き合ってた頃から、変わってないな。首筋に香水つけるクセ。」
「あ………」
そう言えばそうだ……
無意識に毎日首筋に香水つけてた。
「しかも、クロエの。俺大好きなの、昔から。」
音弥………
やめて………もう思い出したくないの
あんな苦くてイヤな思い出………
どうして、思い出させるの………?
私は音弥の大きな胸を押した。
「菜月?」
「やめて、名前で呼ばないで。」
私は立ち上がり、乱れたシャツをただした。
「菜月……」
「キャッ…」
腕を引き寄せられ、すっぽりと音弥の胸の中に抱きしめられた。
「嫌よっ………離してっ………っ」
「何で?」
「"何で?"当たり前でしょっ!思い出したくないのっ………あんなイヤな思い出………せっかく忘れてたのに………どうして思い出させるの………」
私は泣きながら、ぐったりした体を音弥に預けた。

