Spirit of Dragon~断罪の炎編~

「裏街(スラム)だよ。あえてここに来るような奴はいないだろーなー。雰囲気悪いし」
 
 
人の姿は見えない、でも人の気配はする。ねちっとした人独特の視線をあちらこちらから感じる。
 
 
それを感じとったニイナが声に出した。
 
 
「監視されてる」
 
「気配読めるんだ。やるねぇ」
 
 
感心して手をぱちぱち叩いた。この“気配を読む”ってのは口で言えば簡単だがやるのは非常に難しく、ある程度の経験を重ねていないと身につかなかったりする。
 
 
「あたしだって殺気や気配は読む事くらいできるわよ」
 
「へぇへぇすんませんね。んじゃ何人いる?」
 
 
ニイナは顔を真正面に向けて歩きながら目だけを動かし様子をうかがった。
 
 
「たぶん二十は……」
 
「近い!!あと三人プラスで。だっはっはっ、は?あっ、着いた」
 
 
足を止めた先はヘンテコな物体が棚いっぱいに所狭しと並べられた店。
 
 
「ここ?マジックショップ?」
 
「も、売ってるけど本業は情報屋。あんま触るなよ?高いから」
 
 
マジックアイテムはバカ高い。特に呪具が高かったりする。ものにもよるが、家一軒買えてしまうアイテムもある。
 
 
表通りのショップと違い、スラムのマジックアイテムは二桁くらい値段が違うレアアイテムが売っている。
 
 
見たこともない値段にニイナが少しばかり唖然としている様子。
 
 
やっぱ高いか……。
 
 
「よぅ、黒髪の。今度はまたえらいもの引き受けちまったな。ケケケ」
 
 
唐突に店の奥から低い男の声が響いた。ニイナがビクつき隠れるように俺の後ろに来て背中を引っ張った。
 
 
「おぉ怖いな、よしよし。怖がってるよ、イシュカ」