「これも持って行くの?」
 
 
心底嫌そうな顔をするが、デノホーンの角が漢方に使われたり、硬い皮膚が生活道具になる事を説明すると納得したようだった。
 
 
魔方陣を描き魔力を流し込む。
瞬間――足場を失う感覚がしたかと思うと目の前が真っ白になり――気がつけばガルシア・シティへと続く街道の脇に一同はたっていた。
 
 
深い森の中にいたもんだから時間の感覚が無かったが、赤く染まる夕陽が山間に沈みかけている事から夕方だと推測できる。フッ、天才。
 
 
「ふぅー、着いた着いた。風呂の前に飯にするぞ飯に」
 
「あ、うん……えっ?」
 
 
俺の言葉にキョトンと目を点にするニイナ。
 
 
「え、じゃなくてさ。飯だよ、飯。食わねぇのか?」
 
「食べる!けど……この後あたしはどうしたらいいの?」
 
「後?んなもん……俺と宿取って寝たらいいだけの話じゃねぇか。疲れてんだろが」
 
 
それを聞くとみるみるニイナの顔が紅くなっていった。
 
 
……おっと!説明がまずった。
 
 
「待て!待て待て。宿をとるが二部屋な!勘違いすんなよ?この国にいてる間は俺といるだけでほとんど金いらねぇから。金は心配すんな」
 
「ビックリしたぁ。てっきり下心があるのかと……」
 
 
自分の身体をキュッと抱きしめ、ジト目で俺を見てニイナが言った。
 
 
んなっ!!
 
 
「あ、あるかぁぁ!!」
 
 
俺の叫び声は沈みゆく夕陽に溶けていくのだった。