奥手な私と奥手な君


「はうあぁあ!!」


あまりみにも距離が近くてまっ君の顔が目の前にあって…!!!




「ちょっとそこのお二人さん!イチャイチャするのやめてくれませんかー?」


口の端をあげて二ヤつきながらヒロミが言う。



「谷さん、そうやってからかったら雅美ちゃんが困っちゃうよ?」

「旦那さんが奥さんかばってるー!」

「安部も谷さんの暴走とめてくれよー;」

「いやー、微笑ましいしいいんじゃない?」

「ちょっと俺様のこと忘れてない??ねぇねぇ……。MUSIですかー!?」

「伊場君うっさい!今は二人のこといじるので忙しいの!」



みんながギャーギャー騒いでる中

私は胸の鼓動を抑えるのに必死で水を飲んだり深呼吸したり。

でも…まっ君を見るとまた鼓動が速くなるの繰り返し。

(心臓もたないよー;)


なんて思ってたら




「俺は何言われても良いけどさー、雅美ちゃんが俺なんかとそういう風に見られたら可愛そうだろ?」


まっ君がそう言った。


なんかそれ聞いた瞬間に




一気に心臓のドキドキがスローペースになっていって…

逆に止まっちゃうんじゃない?ってくらい静かになっていった。



なんでこんなに胸、痛いの?
心臓すごい痛い。




「雅美ちゃんには…ほら、伊場みたいな楽しいやつが似合うしさ?」

「お前MAJIわかってんなぁ!!」


もう、やだ。

「俺みたいな暗いヤツなんかじゃだめだよ。」

もう、やめて。

「雅美ちゃんは俺なんかじゃ…。

やだ!!! もう聞きたくないよぉ!!!





バンッっ


物凄い音を立てて扉が閉まった。

私、こんなに乱暴に扉閉めたことない。

でも気がついたら乱暴に扉を閉めて、お店の外に出て走り出してた。





どこに??

わかんない。



でも、かすかにわかるのは、






まっ君から離れたくて。









走ってる。