キミの心の声を聞かせて


この日の帰り道。
いつものように、あたしを家まで送ってくれるはずの雄大が…あたしの隣にいない。


数分前、部室で帰る支度をしていたら、雄大が

「ごめん。きょう用事が出来て送れなくなった」


突然、そんな事を言い出した。

「あ、いいよ。別に1人でも平気だし」

それに、そもそも雄大があたしを送ってくれるようになったのも


高津洋子達から、あたしを守る為でもあったわけだから


高津洋子と和解した今、一応、あたしがいじめられる理由はないわけだし。




「心配しないで。まだ外明るいしさ。気にしないでいいよ」


窓から7時前でも明るい空を指差しながら言った。



雄大には、雄大の付き合いがある。


あたしが軽音部に入ってから、雄大は毎日あたしを送ってくれたんだ。



もう、それ以上の優しさはいらないよ。



「ごめんな」とすまさそうに言う雄大の隣に「ごめんね」と頭を下げる恭子さんの姿を見て


自分の中に残っていた雄大への“好き”という想いをまた1つ、心の奥に閉じ込めた。