「柚花おはよぉ~。」

…出た。

彼女は、斉藤佳織【サイトウ カオリ】。

世の中で言うブリッコ。
どうやったら彼女のような声が出るのか、未だによく分からない。知りたくもないけど。

『おはよ。』

「ねぇ~。柚花、今日の放課後ひまぁ~?」

『あー、ごめん。今日予備校あるから。』

「えぇ~…。じゃぁ~、明日はぁ~?」


……明日駄目だったら、明後日…駄目だったら明々後日…。一生続くだろうな。…めんどくさい。

『あー…。明日は何もないよ。』

「まぁじでぇ~ッ。じゃぁ、遊びにいこ~ッ!」

『…うん、いいよ。』

「またメールするねぇッ!」

『わかった。』


ちょうど良く予鈴が鳴った。

予鈴が鳴ったことに、『よかった』なんて思う自分がいる。
人と絡むのは苦手だし、めんどくさい。


席を立っていた生徒が徐々に席に着く。


―――このまま

誰にもあたしの時間を邪魔されないで、明日なんて来なければいいのに…。

毎日、そんな叶わない考え事をする。