”未完全”

 あの日は、期待と少しの不安の入り混じった日だった。

高校生活の始まりの一日目。

綾乃は、父親の転勤の為、横浜という土地に

引っ越してきたばかりで、

その為、学校に友達など居る訳などなく、

全くの一からのスタートだった。

不安もあったが、引っ越す事に慣れてはいた。

今まで二度程、父親の転勤で、同じ経験をしている。

前の経験から、多分うまくやっていけるだろうと、

何となくは、感じていた。

とりあえず、なんでも話せる友達が一人欲しかった。

綾乃の外見は、ちょっと人目をひく可愛らしい女の子だった。

積極的?ん~ん、リーダーシップをとるタイプではない。

かといって、消極的でもない。

まぁ、ちょっと可愛い16歳の女の子だった。


綾乃は、担任の先生が、優しそうな人だという事を

確認してから、教室の中を何気なく見ていた。


 その時、目が合った女の子がいた。少しぽっちゃりめで、

笑顔の可愛い女の子だった。



 その女の子が有美香だった。