人を殺した人間を好く人間なんているわけがない。
そう思っていたのに。
「何人くらい?」
「へ?」
「何人殺したの?」
という意味のわからない言葉を続けた。
「わからない。
何人殺したかなんて。
普通の人間なら殺すはずのない数の人間を殺した」
「なんで?」
また出たよ。
『なんで?』が。
「理由などない。
しいて言うならそれがあたしの宿命だからだ」
何も言わなくなったからあきらめたんだと察した。
そのまま玄関のほうに歩こうとした。
そのとき。
「よかった。
自分の意思ではないみたいで」
といいながら腕をつかまれた。

