ショウ の三文字。
今、一番聞きたくなかった三文字だった。
だんだん近づいてくる濁りのない声が俺の親友の声にかき消される。
何度もリピートした綾乃の声。
けど、何度も無理にリピートされるショウの声。
コツ…コツ…コツ
近づく靴の音。確か綾乃はブランドもののローファーを履いてたっけ。
ショウは…なんだっけ?
だめだ、思い出せない。
大きくなる声と心臓の音。
ドクン―――ドクン…ドクン
コツ…コツ…
「キャハハッ!それ、嘘っぽーい!」
「いや、マジマジ!でさ――そん時のアイツさ――」
あぁ、俺は今見たくないものを面と向かってみてしまった。
どうしても
『帰ろう』
動かなかった足がどんどん深みにはまって抜けなくなりそうだった。
『見てられない』
でも、もう遅かったんだ。
深みに…今、『はまった』。

