すぐ角を曲がった。
俺の大好きな髪の色、あの甘いシャンプーの香りがだんだん近づいてくる。
…いた。
「ハアッ…ハアッ…あや…――――――」
俺の目に映ったのは泣いてる綾乃でも
俺の望む綾乃でもなかった。
「あや…の?」
喉の奥が詰まる感覚、心臓が重くなっていくのがハッキリと分かった。
男と…………………一緒に笑って顔を赤くしてる綾乃が俺の目に
滲む涙と一緒に映った。
涙 なんて言葉、俺には一生ないって思ってたのに。
アイツが誰かとあんな風にしてるのが悔しくて、心臓をナイフで突き刺されたかのような痛みに襲われて。
どうして、涙なんか…。
遠くて会話が聞こえないぶん、不安が募る。

