「どこだよ」
じれったくなって俺はニューロンに電話した。
「近いよー」
車で三十分程度の距離、とだけニューロンは答えた。

それからニューロンは声のトーンを下げに下げ、おどろおどろしく語り出す。
「昔、その館に住んでた外国人一家が惨殺されたんやて…」

俺は二人にも聞こえるようにハンズフリーに切り替えていた。

「で?」
ガクが先を促す。
「その一家の呪いが薔薇に姿を変え、その館を取り囲むように咲き誇ってるんよ、誰の手入れも無しにな」
冷めた物言いのガクにシラけた様子のニューロンは淡々と続けた。
「面白いね」
「その薔薇は人間の血を吸っているから真っ赤なんやて~」
ニューロンは再び不気味な声色でヒッヒと奇妙に笑って恐怖を煽った。

アイさんは逆にますます面白がっていた。
この辺りはかつて激戦地だったので戦争にまつわる心霊スポットは多々あった。
洒落にならない目にあって、寺に駆け込んだこともある。
その度にこっぴどく叱られるのだが、最近は怒りを通り越して呆れられていた。

結構な数のスポットを回ってきたつもりだったが、今回のような場所は初めてだ。

それで、一も二もなく翌日に行こうということになったのである。